社員の主体性を解放する新しいリーダーシップの形とは?今月の注目記事ご紹介ーATD TD Magazine 2025/9月号
- Satomi Uno

- 9月17日
- 読了時間: 5分
TD Magazineは、世界最大の人材開発専門家の非営利団体であるATD(Association for TalentDevelopment)が発行する定期刊行物です 。2025/9月号のトピックをご紹介します。
A Leader in Every Seat
「うちの社員は、なぜもっと自発的に動いてくれないのだろう?」
「決断がいつも管理職頼みで、現場のスピードが上がらない…」
このような課題を感じたことはありませんか?
従来のトップダウン型、いわゆる「指揮命令型」のリーダーシップは、今日の労働力に対して効果的とは言えなくなっています。上司が部下の仕事に細かく口を出し、すべての意思決定を管理しようとするスタイルは、社員のモチベーションを削ぎ、組織全体のパフォーマンスを低下させる原因となり得ます。
今月のTD誌9月号では、このような課題に一石を投じるフレデリック・A・ミラー氏とジュディス・H・カッツ氏による注目記事「すべての席にリーダーを (A Leader in Every Seat)」が掲載されています。
本記事が提唱するのは、組織のあらゆる役割、あらゆる階層のすべての人々がリーダーシップを発揮するという、新しいリーダーシップモデルです。
全員が「オーナー」になるための鍵、「エージェンシー(主体性)」
この記事の核となるコンセプトは「エージェンシー(主体性)」です。
これは、役職や勤続年数、個人のアイデンティティに関わらず、すべての社員が自分の仕事と組織の発展のために選択・決断する力、影響力、そして発言権を持つことを意味します。社員一人ひとりが自分の役割における専門知識と経験を活かして主体的に行動することで、組織の成功に対する当事者意識と責任感が育まれます。
管理職に求められるマインドセットシフト:「管理者」から「コーチ」へ
この変革を実現するためには、管理職の考え方を根本的に変える必要があります。記事では、管理職が従来の「管理者」から「コーチ」へと役割をシフトさせることが不可欠だと説いています。
具体的には、部下を信頼し、彼らが自ら意思決定できるように権限を委譲します。
また、失敗を罰する文化から学びの文化へと転換し、部下が安心して意見やアイデアを表明できる環境を整えることが求められます。
リーダーの役割は、明確なガードレール(境界線)を示し、意思決定の障壁を取り除き、社員が必要な情報にアクセスできるように支援することです。

人材開発(TD)部門が果たすべき重要な役割
この組織変革において、人材開発(TD)部門は中心的な役割を担います。TD専門家は、以下の取り組みを通じて、全社員のリーダーシップと主体性を引き出すことができます。
リーダーのコーチング能力開発:管理職が部下を導く「コーチ」となれるよう支援する。
全社的なスキル構築:クリティカルシンキングや意思決定など、主体的な行動に必要なスキルを全社員に提供する。
主体性を引き出すための行動計画の策定支援:各部署が主体性を発揮するための具体的な計画作りを促進する。
オンボーディングへの統合:新入社員が初日から主体性を持って働けるようなマインドセットを醸成する。
このアプローチがもたらす効果は絶大です。
意思決定が適切なレベルで迅速に行われるようになり、社員のエンゲージメントと定着率が向上します。
さらに、リーダーはマイクロマネジメントから解放され、より戦略的な業務に集中できるようになり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
Coaching Options Abound
【CASE IN POINT】多様なコーチングで組織変革を加速させるには?
「すべての席にリーダーを」で提唱された、全社員の主体性を引き出す組織文化。これを実現するための具体的な施策として、コーチングの活用を検討されている方も多いのではないでしょうか。
今月号では、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの先進的な取り組みを紹介するミシェル・F・デヴォー氏の記事「豊富なコーチングオプション (Coaching Options Abound)」も必見です。
同センターでは、コーチングを組織変革を推進する戦略的なドライバーと位置づけ、役職に関わらず全従業員が利用できる多様なコーチングプログラムを提供しています。
課題に合わせた多様な選択肢: 従来の1対1だけでなく、新任リーダー向けの「オンボーディング・コーチング」や、特定の課題に短期間で対応する「オンデマンド・コーチング」、さらにはチーム単位でのコーチングなど、豊富な選択肢を用意しています。
主体性を尊重する仕組み: 従業員がデータベース「CoachFINDER」から、経歴や専門性を見て自らコーチを選べるというユニークな仕組みも特徴的です。
この多角的なアプローチの結果、コーチングを受けた従業員はそうでない従業員に比べ、離職率が48%低く、昇進率が41%高いという驚くべき成果を上げています。
「全員がリーダー」である組織を支える人材開発施策のヒントが満載です。こちらもぜひ、併せてご一読ください。
TD Magazine:世界最大の人材開発専門家の非営利団体であるATD(Association for TalentDevelopment)が発行する定期刊行物です。この雑誌は、最新の人材開発のトレンド、ベストプラクティス、研究成果などを紹介、効果的なトレーニングプログラムの設計と実施方法・次世代リーダー育成戦略やリーダーシップ開発・テクノロジーの最新動向とその活用方法・組織開発などのトピックを取り扱っています。
日本の人事・人材開発担当者や対人支援者にとって、グローバルな視点からの洞察を得る貴重なリソースとなります。最新の人材開発の動向を把握し、自身の専門性を高めるための有益な情報源として、TD Magazineの活用をお勧めします 。



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