個々に合わせたラーニング・ジャーニーを設計する ーATD TD Magazine 2025/8月号より
- Satomi Uno

- 8月8日
- 読了時間: 5分
更新日:11月10日
TD Magazineは、世界最大の人材開発専門家の非営利団体であるATD(Association for TalentDevelopment)が発行する定期刊行物です 。2025/8月号のトピックをご紹介します。
Personalization Matters
本記事では、従来の画一的な研修は、学習者の多様な背景やニーズを無視し、エンゲージメントや効果を低下させるとして、学習経験の設計において学習者ペルソナを基礎とすることの重要性を強調しています。
学習者の特徴(役割、経歴、学習好みなど)に合わせてラーニング・ジャーニーをカスタマイズする。
これにより、学習者のエンゲージメント、知識の定着、スキルの応用が向上し、人材開発(L&D)チームはより大きなビジネスインパクトを生み出すことができます。
コンテンツ中心から学習者中心への転換が不可欠です。
従来のトレーニングが不十分な理由:
多くのL&D(学習と開発)プログラムはコンテンツ中心であり、学習者のエンゲージメントや影響を考慮していないため、トレーニングと実世界での応用との間に乖離が生じています。
”ワンサイズ・フィット・オール”のアプローチでは、学習者の多様な背景、役割、責任、事前知識、学習嗜好、職場での課題を無視してしまうため、学習者の興味を失わせ、コンテンツの関連性を見失わせ、結果として学習内容を意味のある方法で応用できなくなります。これにより、貴重なトレーニングリソースが無駄になり、 workforce development の目標達成が阻害されます。
学習者ペルソナの利点:
学習者ペルソナは、学習者の実際のニーズに基づいたトレーニングプログラムを設計するための構造化された方法を提供します。
これらは、学習者層の異なるセグメントを表現する架空のデータ駆動型プロファイルであり、学習者一人ひとりがユニークであることを認識し、その異なる経験、スキル、動機を定量化しようと試みます。
ペルソナを使用することで、学習が関連性、意味、効果を持ち、人々が知識を自然に吸収し応用する方法を反映するようになります。
学習者セグメントを特定し、パーソナライズされた学習ジャーニーを設計することにより、L&Dチームはエンゲージメント、定着、スキル適用を向上させることができます。
ペルソナ作成のステップ:
学習者調査の実施: 従業員の学習嗜好、動機、課題に関するインサイトを収集するために、アンケート、インタビュー、フォーカスグループ、LMSデータ、パフォーマンスデータ、職場での観察などの手法を組み合わせます。
主要な学習者セグメントの特定: 役割と職務、キャリア段階、学習嗜好、作業環境などの要因に基づいて、学習者を異なるオーディエンスセグメントに分類します。
詳細なペルソナプロファイルの作成: ペルソナプロファイルには、名前と役割、専門的背景とキャリア目標、課題、動機とトリガー、学習嗜好などの詳細を含めます。
学習ジャーニーへのペルソナの適用:
事前アセスメント: ペルソナを使用して、特定の職務やキャリア段階に合わせてアセスメントを調整し、ベースラインスキルとギャップを特定します。
カスタム学習パス: 各ペルソナの職務、キャリア段階、学習嗜好に合わせて学習コンテンツを調整し、段階的な学習パス(初心者、中級者、上級者)やパーソナライズされたコーチングを提供します。
実践的な応用: 職場での課題を模倣した現実的なシナリオを設計し、仮想現実シミュレーションやケーススタディなどの適切な形式を選択し、実世界でのプロジェクトを通じて学習を強化します。
サポートネットワーク: メンターシップやピアラーニングから恩恵を受ける学習者を特定し、学習者ペルソナに基づいたディスカッショングループを作成することで、継続的な学習文化を育成します。
Humanity Is Powering the Future of Work
この記事は、人工知能(AI)やデジタルトランスフォーメーションによる「地殻変動」が続く現代において、「人間中心のリーダーシップ」が組織の成功に不可欠な羅針盤となると提唱しています。
これは、共感、信頼、そして従業員のウェルビーイングをあらゆる業務の中心に据えるアプローチです。
人間中心のリーダーは、従業員の話に耳を傾け、心理的安全な環境を築き、個人の目的を組織目標と結びつけることで、従業員エンゲージメントを21%向上させ、生産性を17%高めることができます。
AIは業務を効率化し、新たな洞察を提供する「加速装置」である一方、その導入方法を誤ると、共感性や人間的な交流を損なうリスクも伴います。したがって、リーダーはAIを従業員の経験を豊かにするツールとして、慎重かつ思慮深く統合すべきです。
「人間中心」のアプローチでは、リーダーは各チームメンバーの目標、強み、成長領域を深く理解し、個別化されたコーチング、メンターシップ、そして継続的なフィードバックを通じて、彼らが学び、成長する機会を提供する必要があります。
最終的に、本記事では、未来の仕事は「人間かAIか」ではなく、「人間とAI」の融合によって形作られると強調し、共感が最も強力なリーダーシップツールであるというメッセージで締めくくっています。
リーダーシップを「指示統制」から「好奇心と協働」へと転換することが、適応性と回復力のある職場を築く鍵となるでしょう。
TD Magazine:世界最大の人材開発専門家の非営利団体であるATD(Association for TalentDevelopment)が発行する定期刊行物です。この雑誌は、最新の人材開発のトレンド、ベストプラクティス、研究成果などを紹介、効果的なトレーニングプログラムの設計と実施方法・次世代リーダー育成戦略やリーダーシップ開発・テクノロジーの最新動向とその活用方法・組織開発などのトピックを取り扱っています。
日本の人事・人材開発担当者や対人支援者にとって、グローバルな視点からの洞察を得る貴重なリソースとなります。最新の人材開発の動向を把握し、自身の専門性を高めるための有益な情報源として、TD Magazineの活用をお勧めします 。






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