Gallup社より〜職場の現状2025レポート:エンゲージメントと幸福度の世界的危機
- Satomi Uno

- 8月7日
- 読了時間: 9分
更新日:8月8日
Gallup’s 2025 Global State of the Workplace Report offers what may be our last snapshot of a workforce on the cusp of seismic change.
〜State of the Global Workplace2025 Report Executive Summary From the CEO
”今回のGallup社のレポートは、劇的な変化の直前にある職場の、最後のスナップショットとなるかもしれません。”
とあるのは、State of the Global Workplace 2025 Report エグゼクティブサマリー内のGallup社CEOメッセージです。

AIがあらゆる業界を根本から変革しているまさにこのタイミングで、データが示しているのは、従業員のエンゲージメントが低下していること、そして従業員 ---特にマネージャーが孤独感を感じていることを示しており、世界中の職場が新たな働き方に向けた時代の転換点にあることがわかります。
本調査レポートについてGallup社主催のウェビナーに参加しましたので、レポート内容と併せてサマリーをお届けします。
また、今年2025年、初めてワシントンD.CにてGallup社が開催した経営者会議では、調査の最新データと洞察が紹介され、経営者と従業員の双方が直面している課題と機会について広く検証されました。会議会場でのCEOのジョン・クリフトン(Jon Clifton)氏のメッセージについても、一緒にご紹介します。
いくつかの歴史的発見 -世界中の職場の動向
Gallup社主催ウェビナーWebinar ’More Insights on the Global Workplace’より
全く仕事と職場にエンゲージしていない従業員(Actively Disengaged employees)の心理的ウェルビーイングは、失業状態よりも、低い。
→ エンゲージしていない仕事に就いていることは、仕事がないことよりも悪いということ。そしてもちろん失業状態は特に連続した複数年に渡る場合、心理的ウェルビーイングにとって最も悪い経験の一つであることがわかっている。
労働市場が劣悪な地域では、全くエンゲージしていない従業員の割合が高い。
労働法とは無関係に、従業員のエンゲージメントは未来への希望と関連している。
→ 国の政策とその国の従業員の福祉との間にはもちろん関連性がある。しかし、エンゲージメントは、労働法がもたらす効果とは大きく独立した形で、人生対する評価と、特に重要な点として、未来への希望と関連している。
マネージャーは、自身がマネジメントするメンバーよりも、日常的にネガティブな経験を多くしている。
マネージャー自身のエンゲージメントは、メンバーのエンゲージメントと密接に関連している。
→ マネージャーが向かう方向に従って、チームもそれに従う傾向があり、マネージャーのエンゲージメントが高い場合、そのマネージャーが率いる個々のメンバーもエンゲージメントが高くなる可能性が高い。
この傾向は国レベルでも同様。つまり、管理者がより積極的に関与している国では、個々の従業員のエンゲージメントも高い傾向にある。
エンゲージメントの高い従業員は心理的ウェルビーイングが高いが、エンゲージメントの高い地域が、必ずしも心理的ウェルビーイングが高い とは限らない。
→ 個人レベルでは成立するが、必ずしも国レベルでは成立しない。エンゲージメントの高い従業員はより高いウェルビーイングを有します。しかし、エンゲージメントの高い国が必ずしも常に高いウェルビーイングを有するというわけではない。この点は、今回の調査レポートのデータの一部にて、より明確に表れています。
本調査レポートのデータ源

Gallup社のWorld Pollは世界中で140ヶ国以上をカバーし、世界の成人人口の99%以上を対象とした世界中で最も包括的で広範な調査である。
ギャラップの調査方法の詳細な説明は、調査レポート末巻に記載されています。
3つのパートで構成
本調査レポートは3つのパートで構成されています。

パート1:危機的状況に直面している従業員エンゲージメント
パート2:人生満足度調査
パート3:データに込められた希望:マネージャーのエンゲージメントに焦点を当てて、注力するために、3つの強い行動の呼びかけ
パート1:2024年、世界の従業員エンゲージメントは23%から21%に低下。

過去12年間で低下したのは2回だけであり(2020年と今回のみ)、昨年からの2ポイント低下はCOVID-19のロックダウンと自宅待機命令が実施された年の低下と同一規模だった。
今回の2ポイント減少の主要なトリガー
主な要因はマネージャーのエンゲージメントの低下であることがわかった。マネージャーのエンゲージメントが、他の従業員カテゴリーと比べて最も急激な低下を示している。前年比で、世界中のマネージャーのエンゲージメント率は30%から27%に低下した。
興味深いことに、対照的に、メンバーのエンゲージメントは18%で横ばい。
より具体的にその減少がマネージャー層のどこから来ているかを分析すると、35歳未満の若いマネージャーと女性マネージャーが最もネガティブな影響を受けていることがわかる。
なぜでしょうか?
世界中のマネージャーは、さまざまなリーダーシップの指針と、急速に変化するメンバーからの期待との交差点で、本当に困った状況に直面しています。
同時に、組織全体は、多様な角度から生じる混乱に対応するために努力し続けている。
グローバル全体で明らかなことは、
多くのチームは、パンデミック対策の刺激策の終了に伴い、予算が縮小し、そのため重要なリソース不足に直面している
新規人材の採用力が変動している
顧客の期待は、引き続き高まり続けている
当然ながら、新たな技術が次々と導入されており、生成AIの職場での積極的導入により、全く異なる働き方を生み出している。しかもそれは非常に急速なペースで。これらの新たな働き方に、適切に対応するための準備が極めて不足しているとの指摘がある。
組織再編もグローバル中の企業組織で進んでいる。チームの設計を見直し、もちろん、柔軟性に関する絶え間ない調整も進めている。そして、リモートワークはリーダーと従業員の両方にとって依然として最優先事項である。
これらの要因がすべて、マネージャーに大きな負担をかけており、それが生産性に影響を及ぼしている。グローバル組織全体で起こっていることであり、マネージャーが意欲を失うと、つまり、マネージャーのエンゲージメントが継続的に低下すると、その影響はマネージャー自身に留まらず、その影響は急速にチーム全体に波及する。
チームエンゲージメントの70%はマネージャーに起因することがわかっているのだ。
The productivity of the world’s workplace is at risk.
世界の職場の生産性は危機に瀕している
日本のエンゲージメントはCOVID-19以前は6%、2022年に5%にダウンし、2023年6%、今回は7%と小さいアップダウンの変化はあるものの、他国と比較すれば低迷が続いている。本レポートでは、日本は東アジアに分類され、国別エンゲージメントをみると、モンゴル41%、中国 20%、韓国14%、台湾13%であり、香港6%と並んで低迷が続いていることがわかる。
パート2:人生満足度調査はここ2年で33%まで低下

2年連続で人生満足度の評価が低下している。2017年以降、比較的安定した改善が続いてきた後の変化である。この減少は特にマネージャー層における動向に起因している。
興味深いことに、メンバーの人生満足度評価は前年比でわずかに改善している。
マネージャーは過去1年でウェルビーイングが5ポイント低下し、女性マネージャーは7ポイント低下した。マネージャーが職場における変化のダイナミクスによる影響を他よりはるかに大きく受けていることがわかる。
エンゲージメントと同様、この結果がビジネスに与える影響は大きい。
マネージャーのバーンアウト(燃え尽き)は、最終的にパフォーマンスの低下、欠勤の増加、離職率の上昇につながり、彼らが率いるメンバーやチーム組織そのものに影響を与える。
パート3:データに込められた希望:マネージャーのエンゲージメントに焦点を当てて、注力するために。
If 100% engagement seems unrealistic, what if we get to 70%?
世界中の職場が100%のエンゲージメントを果たした場合、グローバル経済に追加できる生産性として$9.6兆ドルが解放される。これはグローバルGDPの約9%に相当する。
世界中のすべての職場で100%のエンゲージメントを実現することは少し過大な目標かもしれません。しかしなぜ試さないのか? とこのレポートでは我々に問いかけています。
ベストプラクティス組織で現実的に実現しているエンゲージメントは70%であり、達成可能である、と。
我々が重視する成果 ---例えば利益率、生産性、従業員の定着率、顧客満足度、従業員のウェルビーイングなど、あらゆる指標においてそのポジティブな影響は極めて大きい。
3つの強い行動への呼びかけ
管理職の極端な離職を半減させるため、すべての管理職に研修を受けさせること
44%_マネジメント・トレーニングを受けていると答えたマネジャー
反数以上のマネージャーが研修を受けていないと答えている。これは、たとえ役割責任に関する初歩的なトレーニングでさえ、マネジャーが溺れそうになるのを食い止めることができることを示唆している。
管理職に効果的なコーチングのテクニックを伝授し、管理職のパフォーマンスを20-28%向上させること
人を鼓舞し、成長させる天賦の才を持つマネジャーもいるが、そうでないマネジャーも多い。
良いニュースは、効果的なコーチングは教えることができるということだ。
トレーニングの9~18ヵ月後にパフォーマンス指標において20-28%改善が見られるとのリサーチ結果もあり、マネージャー・トレーニングの効果が持続する可能性を示唆している。
継続的な管理職の育成を通じて、彼らのウェルビーイングを32%向上させること
雇用主が管理職研修を実施すると、マネージャーの繁忙度は28%から34%に向上する。
しかし、もし彼らがトレーニングを受けていて、職場の誰かが積極的に彼らの成長を促していれば、マネジャーの繁栄度(人生のイキイキ度)は50%にさらに増加する。
優れたマネジャーがチームに与える影響力を考えれば、マネジャーのトレーニングと育成は、雇用主が投資できる最も効果的な「ウェルビーイングの取り組み」のひとつといえるかもしれない。
Gallup CEO Jon Clifton(ジョン・クリフトン)からの重要なメッセージ:
現在の状況を「グローバルな職場の極めて重要な局面」と表現した上で、「人々のマネジメント方法を変えること」が、仕事と生活におけるストレスを軽減し、世界のメンタルヘルス危機に対処するために’極めて重要である’と述べています。
マネージャーは、チームのエンゲージメントの70%に影響を与える途方もない力と責任を担う ”スーパーヒーロー” であり、彼らには指導、支援、トレーニング、権限付与が必要
エンゲージメントは単なる従業員の「幸福」を追求するだけでなく、生産性向上、欠勤減少、顧客エンゲージメント向上、収益性向上など、具体的なビジネス成果に直結すると繰り返し述べています。


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